結論から言うと
世界観の資料は「Draft」(「Manuscript」)フォルダーの外にあるフォルダーに置きましょう。そうすれば文字数にも、コンパイルした本にも含まれません。始めるときは、小説用テンプレートの「Characters」「Places」「Research」フォルダーを使います。繰り返し使う記録の種類は自作のドキュメントテンプレートにし、場面には人物や場所のキーワードを付け、検索はコレクションとして保存し、場面とスケッチはドキュメントリンクで結びます。ドキュメントリンクは、初期設定ではリンク先に逆向きのリンクとなるブックマークを残します。Scrivenerがつなぐのは自分でリンクやタグを付けたものだけで、カスタムの日付フィールドに入るのは現実の暦の日付です。また、一つのプロジェクトを二か所で同時に開いて編集してはいけません。
Scrivenerにはすでに章の原稿が入っています。世界観も同じプロジェクトに置けば、ウィンドウはひとつ、バックアップもひとつで済み、場面を書いている途中でアプリを切り替える必要もありません。危ういのは、設定が原稿のフォルダーに紛れ込み、重要な事実がすべて、リンクも張れない一つの長い文書に詰め込まれたバインダーになってしまうことです。
Literature & Latteは、Scrivenerをメモ、資料、執筆のすべてをまとめる場所として紹介しています(概要)。このガイドでは、macOS版とWindows版について公式に説明されている機能を使い、Scrivener 3のプロジェクトの中に世界を組み立てます。例にするのは、鉱山町Hollowmereを舞台にした架空のファンタジー『The Singing Seam』です。登場するのは、鉱石の分析官Ysolde Brand、弟のCorin、監督官(Warden)のHask、そしてDeep Galleryと呼ばれる坑道の一層です。坑夫たちによれば、そこでは落盤の前に銀が歌うのだそうです。
世界観は原稿のフォルダーの外に置く#
どのプロジェクトにも、ルートに三つのフォルダーがあります。「Draft」(テンプレートによっては「Manuscript」)、「Research」、「Trash」です。小説用のテンプレートでは、さらに「Characters」「Places」「Notes」などのフォルダーが加わります(Researchフォルダー)。世界観の資料は「Draft」の中ではなく、その横のフォルダーに置きましょう。最上位の「Draft」や「Manuscript」フォルダーの外にあるフォルダーは、プロジェクトの文字数に数えられず、コンパイルもされません(世界観設定)。
同じ記事では、「Characters」の中に家族、勢力、地域ごとのサブフォルダーを作り、「Places」の中も同じようにまとめることを勧めています。Hollowmereのバインダーは次のようになります。「世界」は自分で追加するフォルダーです。
Manuscript
Characters
Brand家
Wardens
Places
Hollowmere
山の下
世界
設定
用語集
年表
Research
Template Sheets
Trash
スケッチから始め、自分のテンプレートを作る#
小説用のテンプレートでは、「Characters」フォルダーを選んでReturnキーを押すとCharacter Sketch(キャラクタースケッチ)が追加されます。ツールバーの「Add」ボタンからCharacter Sketchを選ぶこともできます。「Places」でのSetting Sketch(舞台のスケッチ)も同じ方法で作れます(キャラクター、舞台)。スケッチの見出しはあくまで提案です。舞台のスケッチには「Role in Story」「Season」「Sights」「Sounds」「Smell」(物語での役割、季節、見えるもの、音、におい)といった見出しがあり、どれも上書きできます。インスペクタのあらすじ欄に画像をドラッグすると、フォルダーのコルクボードでそのカードに画像が表示されます(キャラクター)。Character Sketchがあるのは小説用のテンプレートだけなので、ほかのテンプレートから始めたプロジェクトでは、自分でシートを用意する必要があります。
Hollowmereには、この二つのスケッチでは足りない記録があります。設定、勢力、用語集の言葉です。それぞれにドキュメントテンプレートを作りましょう。「Draft」の外にフォルダーを作り、Project > Project Settings > Special Foldersでそれをテンプレートフォルダーに設定します。テンプレートフォルダーは、1つのプロジェクトにつき1つだけです(ドキュメントテンプレート、Windows版マニュアル)。すると、その中のドキュメントがProject > New from Templateと「Add」ボタンのメニューに表示されます。設定用のテンプレートには、見出しを四つ置きます。
設定:[名前]
真実:
人々が信じていること:
誰が、いつから知っているか:
初出:
「銀の歌」の項目には、その音は実在し、沈下していく坑木から出ていること、坑夫たちは前兆として扱っていること、それを測ったことがあるのはYsoldeだけであること、そして第6章で初めて登場することを記録します。テンプレートの中で真実と信じられていることを分けておくからこそ、後で説明過多にならない設定の出し方ができるようになります。
資料は原稿の横に保管する#
「Research」フォルダーには、テキストファイル、PDF、画像、音声、動画、ウェブページを入れられます。Scrivenerで表示できないファイルでも、どんなファイルでも保存できます。フォルダーの名前は変えられますが、削除はできません。File > Import > Web Pageを使うと、オフラインでも読めるスナップショットを保存できます(Researchフォルダー)。
大きなファイルを取り込むと、プロジェクトのサイズも大きくなります。資料をエイリアス(macOS)やショートカット(Windows)として取り込めばファイルはプロジェクトの外に置かれますが、プロジェクトを別のパソコンに移すと開けなくなります。資料を見ながら書くには、エディターを分割し、もう半分で資料を開きます(Researchフォルダー)。
町と坑道の各層を手描きしたHollowmereの地図は「Research」に入れておき、第14章の追跡劇を書くあいだ、分割したエディターで開いておきます。まだ地図を描いていないなら、困難な旅から始めましょう。
場面にキーワードを付け、コレクションを保存する#
キーワードを使うと、人物、場所など、後で探したいものでドキュメントにタグを付けられます。Project > Show Project Keywordsを選び、「+」ボタンでキーワードを追加して、任意のドキュメントにドラッグします。キーワードは「Characters」のような親キーワードの下に入れ子にでき、名前を変えても、すでにタグ付けしたドキュメントにはそのまま残ります(キーワード)。
コレクションを使えば、検索を、いつでも戻ってこられる一覧にできます。通常のコレクションは自分で選んだドキュメントの一覧で、検索結果のコレクションはプロジェクト内の検索を保存しておき、開くたびに更新されます(コレクション)。構造化された事実には、カスタムメタデータを使います。インスペクタのフィールドとアウトライナーの列が追加され、型はテキスト、チェックボックス、リスト、日付の四つです。設定はProject > Project Settingsで行います(macOS版マニュアル)。
| 執筆中の疑問 | Scrivenerの機能 | Hollowmereでの例 |
|---|---|---|
| Ysoldeが出てくるのはどの場面か | 人物ごとのキーワード | 「Ysolde」 |
| Deep Galleryでは何が起きるか | 検索結果のコレクション | 「Deep Galleryの場面」 |
| この場面は誰の視点か | バインダーに表示されるラベル | YsoldeかCorin |
| この場面は世界の暦でいつか | テキストかリストのカスタムメタデータ | 「第七の雪解け」 |
| 銀の歌について何を決めたか | 設定用テンプレートから作ったドキュメント | 「銀の歌」 |
ラベルは名前を変えたり、自分で選んだ色で追加したりして、視点や舞台の目印にできます(世界観設定)。
場面とスケッチをリンクし、逆向きのリンクを確認する#
場面の中で名前を選択し、右クリックしてLink to Documentを選び、スケッチを指定します。New Linkを選べば、まだ存在しないドキュメントを新しく作れます。入力しながらリンクしたい場合は、Settings(macOS)またはOptions(Windows)の「Corrections」タブでAutomatically detect [[document links]]をオンにします。すると、二重の角括弧で囲んで入力したタイトルがそのドキュメントへのリンクになり、存在しなければ作成するよう提案されます。リンクはインスペクタの「Notes」欄でも使えるので、相互参照を本文から外しておけます(リンク)。
初期設定では、リンクを作るとリンク先に、リンク元のドキュメントを指すブックマークが追加されます。そのため、インスペクタでスケッチのブックマークを見れば、そのスケッチにリンクしている場面が一覧になっています。この設定は、設定画面のBehaviorsにあるDocument Linksにあります。リンクがなくても、ドキュメントのタイトルと一致する語句を選択して右クリックすれば、そのドキュメントを開くよう提案されます(macOS版マニュアル)。小説用のテンプレートでは、「Characters」「Places」「Notes」フォルダーへのプロジェクトブックマークも追加されます(ブックマーク)。
ひとつの改名をプロジェクト全体に反映させる#
推敲の段階で、Deep GalleryがSunken Galleryに変わったとします。次の順序で進めましょう。
- 舞台のスケッチの名前を変える。 リンクは表示されているテキストだけでなく、リンク先のドキュメントそのものを記憶しているので、改名後もそこに届きます(リンク)。
- 逆向きのリンクを確認する。 スケッチのブックマークに、そこへリンクしていた場面や設定のドキュメントが表示されます。まずそれらを読み直します。
- メモの中のリンクテキストを更新する。 リンクを含む箇所を選択し、Edit > Text Tidying > Update Document Links to Use Target Titlesを使います。各リンクのテキストが現在のタイトルに書き換えられ、リンク先がなくなったリンクは削除されます(macOS版マニュアル)。原稿の中のリンクは一つずつ手で確認しましょう。「古い坑道」は、書かれたままで正しいかもしれません。
- キーワードの名前を変える。 「Project Keywords」パネルでキーワードをダブルクリックします。タグ付けしたドキュメントには、そのまま残ります(キーワード)。
- 古い名前で検索する。 プロジェクト検索で、リンクにもキーワードにも記録されていない言及が見つかります。最後に、検索結果のコレクションを作り直します。保存したコレクションは、元の検索条件のまま実行され続けるからです(コレクション)。
Scrivenerが世界観のためにしてくれないこと#
Scrivenerはドキュメントを整理するツールで、世界を自動で把握してくれるわけではありません。特に重要な制約は次のとおりです。
- つながるのは、自分でつないだものだけ。 逆向きのリンクは自分で作ったリンクやブックマークから生まれ、キーワードとコレクションは、自分がタグ付けしたものや検索したものを反映するだけです。リンクしなかった言及は、検索でしか見つかりません。
- 日付は現実の日付。 カスタムメタデータの日付フィールドに保存されるのは、現実の日付と時刻です(macOS版マニュアル)。Hollowmereの「雪解け」のような架空の暦は、テキストかリストのフィールドに入れます。時系列そのものの確認は自分で行う必要があり、その方法は年表のガイドで紹介しています。
- 一人で、開くのは一か所だけ。 マニュアルによると、一つのプロジェクトを同時に複数開いてはならず、ほかの人が編集しているあいだに編集目的で開いてもいけません。Import Project機能では、共同作業者のコピーを取り込んで統合するという、限られた形の共同作業しかできません(macOS版マニュアル)。
- エイリアスで取り込んだ資料は置き去りになる。 エイリアスやショートカットとして取り込んだファイルは、プロジェクトと一緒に移動しません(Researchフォルダー)。
強み
- 世界観のメモ、資料、原稿を一つのプロジェクトにまとめられる
- テンプレート、キーワード、コレクションをその本に合わせて作れる
- ドキュメントリンクが逆向きのリンクとなるブックマークを残す
限界
- つながりは、自分でリンクやタグを付けたところにしか生まれない
- カスタムの日付フィールドには現実の日付しか入らず、架空の暦は扱えない
- 二人で同時に一つのプロジェクトを編集するようには作られていない
単巻ものとシリーズものでの準備#
単巻ものなら、すべてをその小説のプロジェクトに置きます。シリーズものでは、ひとつの問題が出てきます。世界観を、ある巻のプロジェクトから次の巻へどう引き継ぐかです。Literature & Latteは三つの方法を紹介しています(macOS版マニュアル、プロジェクトテンプレート)。
| 方法 | やり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 各巻にコピーしていく | 開いているプロジェクト間でドキュメントをドラッグするか、Documents > Copy to Projectを使う。キーワード、ラベルなどのメタデータも一緒に移る | 巻ごとに別々のコピーを持つため、後で加えた変更は前の巻には戻らない |
| シリーズ用の資料プロジェクトを別に作る | Edit > Copy Special > Copy Document as External Linkでコピーし、ブックマークの一覧か本文に貼り付ける | このリンクは自分のパソコン上のもう一方のプロジェクトを開くので、Scrivenerが見つけられる場所に置いておく |
| プロジェクトテンプレートとして保存する | フォルダー、ドキュメントテンプレート、ブックマークを整えたら、File > Save as Templateを使う | テンプレートが引き継ぐのは構造であって、前の巻で決めた事実ではない |
編集部の判断では、3部作をまたいで正確さを長く保てるのは、資料プロジェクトを別に作る方法です。事実ごとに置き場所がひとつに保たれるからです。2部作なら、各巻にコピーしていくほうが簡単です。どちらの方法でも、それぞれの事実がどこに出てくるかを書き添えるといった、シリーズの設定資料集の作り方で紹介している習慣のほうが、方法の違いよりも大切です。
Scrivenerで世界観を管理するときによくある失敗#
| 失敗 | 対策 |
|---|---|
| 世界観のメモを「Draft」フォルダーの中に置く | 横のフォルダーに移し、文字数とコンパイルの対象から外す |
| 一つの長い「世界」ドキュメント | 人物、場所、ルールごとに一つのドキュメントにして、リンクやキーワードが指せるようにする |
| すべての名詞にキーワードを付ける | キーワードは、検索に使う人物、場所、筋に絞る |
| 架空の暦に現実の日付を使う | テキストかリストのカスタムメタデータを使う |
| 資料ファイルをすべて丸ごと取り込む | 大きなファイルはエイリアスかショートカットにする。ただし一台のパソコンにしか残らないことを承知しておく |
| 2台のパソコンでプロジェクトを開いたままにする | 一方で閉じてから、もう一方で開く |
執筆アプリの外にメモを置きたいなら、この構成を小さく始めるObsidianの世界観設定ノートや、より幅広い世界観設定ツールのおすすめと比べてみてください。
出典
- Literature & Latte: Scrivener overview · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to use Scrivener for worldbuilding · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: Use Scrivener’s Research folder to store information about your project · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to manage your characters in Scrivener · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to manage places and setting sketches in Scrivener · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to create and use custom document templates in Scrivener · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: Use keywords to manage your Scrivener projects · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to use Scrivener’s collections · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: How to use internal links in Scrivener projects · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: Use bookmarks in Scrivener projects · 2026年10月11日
- Literature & Latte blog: Create custom templates for your Scrivener projects · 2026年10月11日
- Literature & Latte: Scrivener 3 user manual for macOS (PDF, March 2026 revision) · 2026年10月11日
- Literature & Latte: Scrivener 3 user manual for Windows (PDF, March 2026 revision) · 2026年10月11日