結論から言うと

架空の年表は、物語の「現在」を軸に作ります。関係する出来事ごとに、その結果と、誰がそれを知っているかを記録します。実際の出来事と世間に伝わる話は分け、不確かな日付ははっきりそうと記し、出来事を動かすたびに移動、年齢、依存関係を確かめます。

収穫の前に橋が焼け落ちたのに、後の章では翌朝に荷車がその橋を渡っている。役に立つ年表は、こうした誤りを見つけてくれます。宇宙の創造から始める必要はありません。キャラクターが依存している期間から始め、それより前の原因が重要になったときに広げましょう。

この方法は、編集部が提案する構想づくりの演習です。以下の町、日付、出来事は架空の例で、史実を述べたものではありません。

物語の「現在」を固定する#

ひとつの出来事を0日目に選びます。ここでは、主人公が川沿いの町に着く日です。暦は後から加えられます。物語で本当に使えるファンタジー暦の作り方では、年齢、季節、名前のある日を確かめられる小ささに暦を保つ方法を説明しています。「到着の3日前」のような相対的な日付があれば、月や閏年を先に考えなくても順序を確かめられます。

橋の火事を−2日目、最初の渡し船を−1日目、評議会の会合を1日目として記録します。この三つの記録だけで、主人公がなぜ船で到着するのか、住民がなぜ仮の渡り方について意見を割っているのかが、すでに説明できます。

すべての出来事に結果を持たせる#

記録は、何かが起きたと述べるだけでは足りません。原因や前段の出来事、直後の結果、それに依存する後の場面を書きましょう。火事なら「橋が使えない」と記録し、見直しが必要になった荷車の移動の予定とリンクします。

表計算シートに数値を入力できるからといって、正確な期間を断定してはいけません。再建の時期がまだ決まっていないなら、その期間には、作者がまだ決めていないことだと印を付けておきます。物語が答えを必要とするまで、その不確かさは自分用の構想メモにとどめておきましょう。

相対的な日付出来事追うべき結果
−2日目橋が焼け落ちる荷車が渡れない
−1日目渡し船の運航が始まる船の定員が、到着できる人数を制限する
0日目主人公が到着する火事ではなく渡し船を目にする
1日目評議会が開かれる修理案が公になる

出来事と、それを知ることを分ける#

主人公が火事の後に着いたのなら、目撃者として火事を語ることはできません。主人公が何を通じてそれを知ったかを記す、2番目の欄を作りましょう。目撃者、噂、文書、推測などです。

世間に伝わる話が、作者の年表と食い違っていてもかまいません。意図したものなら、むしろ役に立ちます。ただし、その違いには印を付け、誤った碑文がいつの間にか別の章で正式な日付になってしまわないようにしましょう。知らせが送られた時点と、それぞれの人が受け取った時点も区別します。

日付を動かしたら依存関係を確かめる#

火事を1週間ずらすと、移動、物資、キャラクターの居場所、評議会の対応に影響が出ることがあります。日付のラベルを整える前に、そうしたつながりをたどりましょう。どの道がまだ使えるかは地域の地図で確かめます。地図上の距離をそのまま移動時間の見積もりとして扱うのではなく、架空世界での移動に関する前提をはっきり決めておきましょう。ファンタジー世界の移動時間を計算するは、その前提を決める一つの方法です。誕生、結婚、継承のつじつまを合わせる必要があるときは、王家の家系図にも同じ確認を使います。

年齢が重要なら、キャラクターの誕生を同じ暦の上で記録し、場面の日付の時点で確かめます。重要でないなら、不必要に正確にするより、おおよその年齢のほうが役に立つこともあります。

火事を到着と評議会の場面まで追う#

架空の住民4人を通して火事をたどります。それぞれがいつ、誰から火事を知り、いま何を信じているかです。

人物火事を知った日情報源信じていること
渡し守−2日目の夜岸から見ていた橋はもう救えない
評議員−1日目橋番の報告誰かが火を付けた
荷車引き−1日目市場での噂話燃えたのは欄干だけだ
主人公0日目川を渡る途中で、渡し守から渡し守が話すと決めたことすべて

これで、到着の場面にははっきりした限界ができました。主人公が知っていることはすべて、自分の意見を持ったひとりの目撃者から来ています。もし渡し守が橋の閉鎖で得をしているなら、炎については生々しく、修理については悲観的に語るかもしれません。

評議会の場面の摩擦も、同じ表の行から生まれます。荷車引きは被害が小さいと思っているので早い修理を望み、評議員は放火を示す報告を握っています。二人は別々の日に、別々のことを知ったのです。

火事を1週間早めると何が崩れるか#

推敲で火事を−9日目に移したとします。まず同じ行をたどりましょう。

  • 渡し船はすでに1週間運航しているので、到着の場面では、その場しのぎではなく、決まった手順と運賃を見せるべきです。
  • 荷車引きには橋を見に行く時間がありました。彼の思い込みを正すか、なぜ近づかなかったのかを説明しましょう。
  • 評議会は会合まで1週間待ったことになります。誰が費用を払うかでもめた、といった遅れの理由を与えましょう。
  • 到着の日に煙に触れている箇所はすべて誤りになり、火事の翌朝に予定していた荷車の移動も動きます。

年表を作品の規模と視点に合わせる#

どこまで追うかは、作品の長さと、読者が誰の視点を共有しているかで決まります。編集部の目安は次のとおりです。

作品の形細かく追うものおおまかでよいもの
短編日や時間の単位、誰がどこにいるか暦、年齢、遠い歴史
長編、視点人物が1人その人物が各出来事を知る時点脇役が知っていること
長編、視点人物が複数各視点人物の知識と、同じ日の居場所どの視点人物も知りえない出来事
シリーズ既刊ですでに書いたことまだ確定させていない出来事

一人称や、人物に寄り添う三人称では、語り手はその日までに見たこと、聞いたこと、推測したことしか伝えられません。全知の語り手なら評議員より先に放火を明かすことができ、そうすると評議会の場面は謎解きではなく劇的アイロニーになります。書き始める前に、どちらの効果を狙うかを選びましょう。

章が過去にさかのぼるなら、時系列順の横に読む順序も並べておきましょう。評議会の場面の後に置かれた火事の回想も、起きたのは−2日目です。

年表でよくある失敗と直し方#

  • 1人のキャラクターが2か所にいる。 視点人物が複数いると、同じ日に荷車引きが一方の筋では市場に、もう一方の筋では街道にいることがあります。複数の筋が重なるすべての日付について、誰がどこにいるかを一覧にしましょう。
  • 季節がずれていく。 火事は収穫の前に起きたのに、数日後の場面で刈り取りの済んだ切り株だけの畑が描かれている。作物や天気が関わる記録には、季節を書き添えておきましょう。
  • 記憶が場面と矛盾する。 何章も後でキャラクターが火事を思い出すとき、細部が違っている。元の記録を確かめ、その食い違いが単なるミスなのか、意図した人物の特徴なのかを決めましょう。

作業用の表示は短く保つ#

いま書いている章に影響する出来事だけを含む表示を用意しましょう。それより深い歴史は、リンクしたメモに置いておきます。つながったノートなら、執筆のたびに資料全体を巡ることなく、その両方を収めておけます。

確かめ方は簡単です。出来事をひとつ変えた後、それに依存する場面、発言、決定を見つけられるでしょうか。見つけられないなら、次の1世紀を加える前に、そのリンクを改善しましょう。

Yazar.ioで順序を組み立てる#

Yazar.ioの「年表」は、この方法に向いています。各出来事には「第三紀、114」のように自分の世界の言い方で日付を書けるので、現実の暦に縛られません。物語が変わったら、出来事をドラッグして新しい順序に並べ替えられます。出来事は、参加する登場人物や、それが起きる場所とリンクでき、それらの登場人物や場所のページには関連する出来事が年表の順に表示されます(アップデート情報)。

橋の火事を追加して、それを目撃した人々をリンクし、出来事のメモに、それぞれがいつ火事を知るかを記録しましょう。火事を動かした後で目撃者それぞれのページを開くと、出来事が新しい順序で並び、到着や評議会の場面でその人物が何を知っているべきかがわかります。日付は自分で書くテキストであり、矛盾を代わりに指摘するものはないため、各場面を順序と照らし合わせるのは引き続き自分の仕事です。

出典