結論から言うと

架空の地域の地図は、ひとつの旅から描き始めます。出発地、目的地、そしてルートを変えてしまう障害です。物語に必要な場所とつながりを加え、縮尺と不確かな部分を書き込んだら、渡る手段がひとつ閉ざされたときに何が起きるかを試します。作者用の地図と、登場人物が手にできる地図は区別しておきましょう。

登場人物たちは、ある会合が始まる前に、川沿いの町から丘の上の集落まで知らせを届けなければなりません。地図は、この問題から描き始めます。先にすべての海岸線を描くのは楽しいかもしれませんが、それで彼らが川を渡れるのか、誰が道を押さえているのかがわかるとは限りません。地図が答えるのは、渡り口がどこにあるかです。舟に乗せるのを断れるのは誰かから、人々が一日をどう数えるかまで、その周りの質問は世界観を作るときの質問が扱います。

ここで紹介するスケッチの方法は、物語を組み立てるためのものです。地形や移動にかかわる前提はすべて架空のものです。現実の地形、天候、交通手段に物語が左右される場合は、地理の下調べの代わりにはなりません。

装飾より先に旅を置く#

町と集落を表す点を二つ描きます。そのあいだに川を一本引き、橋をひとつ書き込みます。さらに、渡し船へ向かう遠回りのルートを加えます。これで、結果の異なりうる二つの選択肢ができました。

それぞれのルートに、存在する理由を与えましょう。たとえば、橋は荷車が通るためのもので、渡し船は川沿いの小さな集落同士を結んでいるのかもしれません。それぞれの渡り口を誰が管理し、誰が通行を拒めるのかを決めます。こうした細部によって、紙の上の一本の線が、登場人物が交渉しなければならない相手に変わります。

距離からわかること、わからないことを記録する#

スケッチに縮尺を設けるかどうかを決めます。設けないなら、メモに「模式図」と書いておき、測量した地図のように距離を測らないようにします。設けるなら、全体を通して同じ距離の基準を使います。

距離だけでは、場面にかかる時間は決まりません。移動手段、休憩、通行の可否、遅れについて、自分で選んだ前提を記録しておきましょう。この架空の旅なら、橋を渡るルートは1日で収まり、渡し船への迂回には一泊が必要だと決めることもできます。これは確かめるべき物語上の制約であって、どこにでも通用する移動速度ではありません。ファンタジー世界の移動時間を計算するは、縮尺のある道を徒歩、馬、荷車、川、海の日数に変えます。

決断を変える場所だけを加える#

迂回で一晩眠る必要があるなら、避難小屋に意味が生まれます。使者が通行許可を持っていないなら、検問所に意味が生まれます。二つ目の村は、そこにいる誰かが助けてくれたり、知らせを伝えてくれたりするなら意味を持ちます。

何かを加えるたびに、それがあることでどんな選択が可能に、あるいは不可能になるのかを考えます。装飾的な場所は、物語に影響するまで別のレイヤーやリストに分けておきましょう。そうすれば作業用の地図が読みやすいまま保たれ、完成版のイラストを豊かにする余地も残せます。

いちばん楽なルートを閉ざす#

ここで、橋をいったん取り除きます。登場人物はそれでもたどり着けるでしょうか。その遅れで得をするのは誰でしょうか。同行者は別の渡り口を知っているでしょうか。その影響を、閉鎖が知れ渡るタイミングも含めて年表の上で追いかけます。

道をもう一本描けばどんな障害も消えてしまうのなら、場面で必要になる前に、その抜け道をふさぐものを決めておきます。通行の可否、距離、閉ざされた国境、あるいは単に登場人物の知識が足りないことでも構いません。すでに語った物語と矛盾しないようにしましょう。

渡し船への迂回を使者に歩かせてみる#

橋は落ち、丘の上の集落での会合は翌日の正午に始まります。使者は夜明けに川沿いの町を出発します。迂回路の各区間を自分で選んだ前提として書き出し、それを崩しうるものを書き添えます。

区間自分で選んだ前提それを崩しうるもの
町から渡し場まで川岸を歩いてほぼ一日道の冠水
川を渡る渡し船は日中しか出ない渡し守が乗船を断る
避難小屋での一泊旅人なら誰でも泊まれる満員、またはよそ者は入れない
小屋から集落まで検問所を通り、午前中いっぱい登る使者が通行許可証を持っていない

この架空の前提どおりなら、使者は少しだけ余裕をもって到着します。その余裕こそが、場面の緊張を生みます。歩くのが遅れれば最後の渡し船は出てしまい、検問所で足止めされれば会合は使者抜きで始まります。その場で新しい障害をこしらえるのではなく、表のどの項目を物語で使うかを選びましょう。

次に、迂回路を場面に当てはめて試します。

  • 日が暮れたとき、使者はどこにいて、そこから何が見えるでしょうか。
  • 渡し場で、ほかに誰が待っていて、その人は何を望んでいるでしょうか。
  • 屋根のない小舟の上で、知らせは無事でいられるでしょうか。橋を渡っていれば、この問題は起きませんでした。

地図でよくある失敗と直し方#

  • 傾斜を無視した川。 水は低いほうへ流れ、川はふつう海へ向かう途中で分かれるのではなく合流します。よく知られた例外が三角州です。海岸に着くずっと前に川が分かれていたり、二つの海をつないでいたりするなら、描き直すか、それを可能にしている理由を自分の世界の中で決めましょう。
  • そこにある理由のない集落。 町は、人がもともと立ち止まる場所に育つ傾向があります。渡り口、浅瀬、港、安定した水源などです。川沿いの町は、おそらく橋を中心に育ったのでしょう。だからこそ、橋を失うことが痛手になります。その理由が岩棚、泉、あるいは町がもう越えてしまった城壁なら、人が暮らすファンタジー都市の作り方が地区と水と、一つの朝を追います。立ち寄りが、そこで水を飲まなければならない群れのためなら、生態系に合うファンタジー生物の作り方が、途中で何を食べ、その道に誰が依存するかを問います。
  • 全か無かの障壁。 切れ目のない壁のように描いた山脈は、プロットを止めてしまうか、無視されるかのどちらかです。現実の山脈には峠があります。自分の山脈にもひとつか二つ峠を設け、それぞれに代償を付けましょう。通行料、案内人、閉ざされる季節などです。同じ山脈は、どちら側が湿るかも決められます。ファンタジー世界の気候の作り方は、町より先に、風と雨陰を地図へ置きます。

物語の規模に地図を合わせる#

一本の道をたどる短編なら、地図を描く必要すらないかもしれません。場所を順に並べ、そのあいだの所要時間を書いたリストで足りることもあります。シリーズものでは、後の巻に余地を残すため、いくつかの地域をあえて空白にしておき、すでに本文に出た場所と距離を記録しておきます。この方法はジャンルを問いません。SFの入植地なら、渡り口はエアロックや補給の往復になるかもしれません。

読者に地図を見せるかどうかは、また別の判断です。編集部の考えでは、次のようになります。

物語が…検討したいこと
読者が追う必要のある多くの場所を移動する本文に名前が出てくる場所だけを示した、シンプルな読者向けの地図
登場人物が後で見つけるルートに左右される読者向けの地図には載せないか、主人公が持つ不正確な写しを載せる
ひとつの町や一本の道から出ない道筋は文章で示し、地図は構想用にとどめる

印刷された地図は、読者が場面と照らし合わせることのできる約束です。ですから、作業用の地図の前提に従っていなければなりません。

作者の知識を分けておく#

構想用の地図には、隠された道を描き込んでも構いません。主人公が買った地図には、それが載っていないかもしれません。いま見ているのが誰の地図で、いつ作られ、どこが間違っているのかを書いておきましょう。地図に載っていないことがプロットの仕掛けとして役立つのは、登場人物がそれを発見するもっともらしい手段がある場合だけです。

ルートが成立したら、小さな命名パターンを使って、その場所同士に統一感を持たせましょう。既存の地図画像を軸に記事を整理したい場合は、ObsidianとWorld Anvilの比較で、ドキュメントに記載されたそれぞれの出発点の違いを説明しています。どちらも描画ツールとしては扱っていません。

地図にまつわる物語のメモはYazar.ioに#

Yazar.ioは地図エディターではないので、地域は好きなツールで描いてください。絵には収まりきらないことを残しておく相棒として、Yazar.ioはよく役立ちます。集落や渡り口ごとに「場所」の項目を作り、地図のスケッチを画像として添付し(1つの項目に複数の画像を付けられます)、誰が各ルートを押さえているのか、渡るには何が必要なのかを記録します(アップデート情報)。

その渡り口に頼っている人物の項目で、渡り口の名前に触れておけば、渡り口のページのバックリンクパネルにその全員が一覧表示されます(機能紹介)。渡り口が閉ざされたら、この一覧を見れば、誰の旅とどの場面に渡し船への迂回が必要になるかがわかります。迂回がいまの場面にとってなぜ重要なのかは、渡り口の項目に書いておきましょう。次に探すとき、そこを見ればすぐに見つかります。

出典