結論から言うと

「無料」の範囲はツールごとに違います。Obsidianは用途を問わず無料で、ノートをローカルのMarkdownファイルとして保存します。同期とウェブ公開は有料です。Yazar.ioの無料プランでは本2冊、エンティティ種別ごとに編集可能なレコード15件まで使え、用語集、年表、メモ、引用は無制限、閲覧専用のWiki、家系図、年表、MarkdownまたはJSONでの書き出しが含まれます。原稿はWordかGoogleドキュメントに残します。World Anvilの無料プランは、2026年8月のアーカイブ時点で、公開記事と地図を少しだけ作れる内容でした。Notionの無料プランは1人で使う限り無制限ですが、ほかの人が加わると制限がかかります。Azgaar’s Fantasy Map Generatorは費用をかけずに地図を作れ、文書ファイルや表計算シートはロックインのない基本の選択肢です。どれに頼る場合も、先に書き出しとバックアップを試してください。このおすすめリストは公式ドキュメントに基づくもので、実際に使って試したものではありません。

無料の世界観設定ツールを見つけるのは簡単です。難しいのは、その「無料」がどこまでを含むのかを知ることです。あるツールではプログラム全体が無料で、同期などの追加機能だけが有料です。別のツールでは、誰でも読める世界に記事を少しだけ書ける、という意味になります。考えるべきなのは、自分の世界のどの部分が最初に制限にぶつかるか、です。

このおすすめリストは順位ではなく、用途ごとに整理しています。内容は2026年10月11日に確認した各製品の公式ページに基づくもので、実際に使って試したものではありません。World Anvilについては、料金ページのアーカイブを参照しています。価格は記載していないため、世界をまるごと移す前に最新の条件を確認してください。

自分で管理できるローカルファイル:Obsidian#

Obsidianのライセンスページには、個人利用、商用利用を含むあらゆる目的で無料で使え、アカウントも不要だと書かれています(ライセンス)。ノートは保管庫(Vault)、つまり自分のパソコン上のフォルダーに、Markdown形式のプレーンテキストファイルとして保存されるため、ほかのエディターでも開けます(データの保存方法)。トップページによると、ノートはオフラインでも利用できます(Obsidian)。

料金がかかるのは、ファイルのまわりのサービスです。Syncはデバイス間の同期、エンドツーエンド暗号化、バージョン履歴、共有保管庫を追加し、Publishはノートをウェブで公開します(料金)。無料版では、共著者や読者との共有は自分で段取りすることになります。もうひとつのコストは構造です。あらかじめ用意されたセクションはないため、フォルダーやテンプレートは自分で設計します。Obsidianで作る小さな設定ノートから始めるのもひとつの方法です。

小説のためのつながった資料:Yazar.io#

Yazar.ioの無料プランは、ずっと無料で支払い情報も不要だと説明されています(機能紹介)。小説家にとっては、ここで取り上げる中でも内容のそろった無料プランのひとつです。便利さを支える機能が、有料ユーザー向けに取っておかれていないからです。本1冊ごとに、各エンティティ種別(「登場人物」「場所」「組織」「世界設定」「種族」「生物」「アイテム」「呪文」「信仰」)で編集可能なレコードを15件ずつ作れ、1件のレコードにはカスタム項目を最大20個まで追加できます。「用語集」「年表」「メモ」「引用」は無制限です。アカウント全体では本2冊と画像50MBまで使え、公開できるWiki、家系図、本の書き出しも含まれます(プランと制限)。

ほかの項目の中で登場人物の名前を入力すると、自動でリンクが張られます。どのページにもバックリンクのパネルがあり、そのページに言及している項目がひと目でわかります。家系図はドラッグ&ドロップで編集でき、リンクした配偶者や親が表示されます。原稿はWordやGoogleドキュメントで書き続ける前提で、Yazar.ioが文章を生成することはありません(機能紹介)。本は閲覧専用のWikiとして公開でき、セクションごとに表示のオンとオフを切り替えられます(共有Wikiのページ)。パスワードを追加できます(Wikiを誰が見られるか)。「メモ」が含まれることはありません。「年表」は公開でき、初期状態ではオフです(Wiki、アップデート情報)。書き出し機能では本全体をMarkdownまたはJSONでダウンロードでき、Markdownの.zipはObsidianやNotionと互換性があります(アップデート情報)。Yazar.ioはエンティティの説明、メモ、カスタム項目の値をAES-256-GCMで暗号化して保存します(プライバシー)。

制限も同じくらいはっきりしています。本2冊とエンティティ種別ごとに15件のレコードは、単発の長編やシリーズの書き始めには十分ですが、登場人物が多くなると足りなくなります。原稿はWordかGoogleドキュメントに残り、場所はリンクされた記録であって地図ではなく、記録は一つのアカウントにあります。レコードの作成や編集には接続が必要ですが、短い通信障害のあいだも、モバイルアプリはすでに開いた本を表示し続けます(オフラインに関するFAQ)。

ほかの人が閲覧できる世界:World Anvil#

2026年8月1日にアーカイブされた料金ページによると、World Anvilには無料プラン「Freeman」があり、世界2つ、記事42件(うち下書きは5件まで)、マーカー10個付きの地図2枚、タイムライン2つ、世界データの書き出しに加えて、ストレージ100MB、アップロード上限1MB(地図は3.5MB)が含まれていました。地図はJPGまたはPNGでアップロードし、そこに記事をピン留めします(アーカイブされた料金ページ)。

同じ表では、非公開の世界と記事、共著者、原稿、家系図は有料プラン限定の機能とされていました。無料プランで書いた内容は公開される可能性があるものとして扱い、プロットの秘密は別の場所に置きましょう。8月以降に条件が変わっているかもしれないので、まず最新の料金ページを読んでください。

自分で設計するデータベース:Notion#

Notionは無料プランを「個人がプライベートなプロジェクトや生活を整理するため」のものとうたっており、この言い回しが大事です。ページとブロックは1人なら無制限ですが、「2人以上のメンバーでは制限あり」です。共有ワークスペースが上限に達すると、既存のコンテンツは編集できても、新しいブロックは追加できなくなります。カスタムプロパティ付きのデータベースは含まれているので、キャラクターの一覧表はすぐに作れます。アップロードはファイルあたり5MBまで、ページ履歴の保存期間は7日間で、オフラインで使えるのはダウンロードを選んだページだけです(料金)。ヘルプセンターでは、ページをMarkdownとCSV、またはHTMLで書き出す方法が説明されています(書き出し)。

地図:Azgaar’s Fantasy Map Generator#

ここまでのノートツールは、どれも地図を描けません。Azgaar’s Fantasy Map Generatorは、ファンタジー地図を作成、編集するための無料のウェブアプリで(リポジトリ)、MITライセンスで公開されています(ライセンス)。Q&Aによると、作った地図は作成者のもので販売もでき、Windows、macOS、Linux向けのデスクトップアプリはオフラインで動作します。

保存には注意が必要です。.mapファイルはパソコン、Dropbox、ブラウザのストレージに保存できますが、ブラウザのストレージはうっかり消去されることがあるとプロジェクト側が警告しています。書き出し形式にはSVG、PNG、JPEG、GeoJSON、JSONがあります。また、プロジェクトはバージョン間の不整合を「避けられない」としており、新しいバージョンで保存した地図は、そのバージョンでなければ開けません(Q&A)。地図作りは、プロットにとって重要な旅から始めましょう。

まだ変わり続ける構想なら:文書ファイルか表計算シート#

基本の選択肢には、おそらくすでに持っているソフトウェア以外の費用がかかりません。項目ごとに見出しを立てた文書と、キャラクター1人につき1行の表計算シートがあれば、最初の長編に必要な設定の多くは意外なほどまかなえます。ファイルは自分のもので、ローカルに保存すればオフラインでも使え、別のツールに移るときはコピーするだけです。失うのはつながりです。リンク、日付、家族関係はすべて手作業で管理することになり、あちこちにコピーした事実は少しずつ食い違っていきます。

小さな世界ひとつで無料版を試す#

候補のツールすべてに、同じ架空の世界を入れてみます。Corrow島には灯台守の家が二つあります。Maren AskeはLow Tannet港を見下ろす北の灯台を守り、Jory Vellは補給船の船長です。二人は北の灯台の火が消えた冬に結婚しましたが、誰が火を消したのかについては誰の意見も一致しません。さらに、三つの島のおおまかな地図も用意したいとします。

  1. 入力する。 キャラクター2人、場所1つ、出来事1つ、結婚1件、そして消えた灯台についての未解決の問いを1つ入れます。Yazar.ioでは、結婚は「家系図」にも反映されます。
  2. 取り出す。 Marenを起点に、彼女に言及しているものを、検索を二度繰り返さずにすべて見つけます。
  3. 見せる。 問いは秘密にしたまま、Low Tannetを読者に公開します。Yazar.ioのWikiでは「メモ」は非公開のままです。World Anvilの無料プランでは、そもそも非公開にできるものがあるのかを確認してください。
  4. 地図にする。 島々を生成し、.mapファイルをディスクに保存してPNGを書き出します。World Anvilではアップロードした画像に記事をピン留めでき、Yazar.ioの「場所」には複数の画像を添付できます(アップデート情報)。
  5. 持ち出す。 すべてを書き出し、そのコピーをツールの外で開きます。結婚と灯台が消えた冬の話がそれでも筋が通っていれば、移行の手段は機能しています。
  6. 数える。 完成した本に必要なキャラクターと場所の数を見積もり、各ツールの制限と比べます。

用途別に無料版を比べる#

用途別の無料版。2026年10月11日に確認した公式ページに基づく(World Anvilは2026年8月1日のアーカイブ)
必要なこと無料の選択肢無料版でできること限界
自分で管理するローカルファイル、オフラインObsidianあらゆる用途でアプリ全体を使える。フォルダー内のMarkdownファイルSync、Publish、共有保管庫は有料
小説のためのつながった資料Yazar.io本2冊、エンティティ種別ごとに編集可能なレコード15件、用語集、年表、メモ、引用は無制限、Wiki、家系図、年表、書き出し原稿はWordかGoogleドキュメントに残り、エンティティの種類ごとに編集できる記録は15件
読者が閲覧できる世界World Anvil世界2つ、記事42件、地図2枚(アーカイブ)非公開記事、共著者、家系図は有料だった
どのデバイスでも使えるデータベースNotion1人なら無制限のページ2人以上ではブロック数に制限、ファイルは5MBまで、履歴は7日間
地図Azgaar’s Fantasy Map Generatorジェネレーターのすべて。MITライセンス、オフラインで動くデスクトップアプリ地図のみ。ファイルは保存したバージョンに依存
毎週変わるアイデア文書ファイルまたは表計算シートすべて。自分のファイルとして手元に残るリンクと年表は手作業で管理

無料ツールでよくある失敗#

  • いつでも移行できると思い込む。 ロックインは初日には見えません。プランが変わってからではなく、最初の1週間のうちにCorrowのサンプルを書き出してみましょう。
  • 同期やブラウザのストレージをバックアップ代わりにする。 Obsidianのバックアップガイドには、同期は「データの損失を防ぐものではない」とあり、一方向のバックアップ専用ツールが推奨されています。Azgaarのブラウザのストレージは消去されることがあります。実際に開き直して確かめたコピーを持っておきましょう。
  • 下書きの途中で制限に気づく。 エンティティ種別ごとに15件、記事42件という数字は、包囲戦の場面で名前のある兵士が30人増えるまでは十分に思えます。使い始める前に数を見積もり、それぞれの事実には設定資料集の中でひとつの置き場所を決めておきましょう。
  • 初期設定のまま秘密を公開してしまう。 無料プランに非公開記事がなければ、物語のどんでん返しはワンクリック先で読まれてしまいます。
  • ひとつの世界を五つのアプリに散らばらせる。 地図はあるツール、キャラクターは別のツール、という分け方でも、どれを正式な設定とするかを決めていれば問題ありません。

有料に切り替えるべきとき#

料金を払うのは、念のためではなく、毎週繰り返す作業を制限が妨げるようになったときです。

  • シリーズが無料枠に収まらなくなった。 Yazar Proでは本とレコードの数の制限がなくなり、カスタム項目の数、レコードの長さ、画像の保存容量も増えます。後で支払いをやめても、何も削除されません。各エンティティ種別の最初の15件を超えるレコードは、閲覧専用として表示と書き出しができます(プランと制限)。
  • 複数のデバイスで書き、バージョン履歴がほしい。 それこそがObsidian Syncの提供するものです。いずれにしても、バックアップは別に取っておきましょう。
  • ほかの人にも編集してもらう必要がある。 Notionの有料プランには共同編集用の無制限のブロックがあり、World Anvilのアーカイブされたページでは共著者は有料プランの機能でした。Yazar.ioには共同編集がないため、料金を払っても追加されません。
  • 公開Wikiの一部を非公開にしたい。 World Anvilのアーカイブされたページでは、非公開記事は有料でした。Yazar.ioの無料のWikiでは「メモ」は含まれず、「年表」は公開するまでオフで、パスワードを追加できます。

Campfireなど、このリストにないツールについてはより幅広いツールのおすすめリストを、このうち二つを並べて比べたい場合はObsidianとWorld Anvilの比較をご覧ください。

出典