結論から言うと

SFの入植地には、はっきりした制約をひとつ決め、その仕組みを誰が維持しているのか、誰が利用を管理しているのか、それが故障したとき誰が結果を引き受けるのかをたどります。確立された科学と、空想上の発明は分けておきましょう。技術を増やす前に、ありふれた場面で前提を試してみてください。

補給船が季節に一度しか来ない、辺境の入植地を思い浮かべてください。これは架空のスケジュール上のルールで、実在の惑星や推進方式について何かを主張するものではありません。まず大切なのは、そのルールのせいで人々が何をするかです。交換部品を誰が注文するのか、何を船に載せるかを誰が決めるのか、何かが足りないとき誰が待たされるのか。

制約がひとつあれば、その結果をたどっていくだけで、役に立つ舞台が生まれます。登場人物に厳しい一日を与えるのに、宇宙全体を説明しておく必要はありません。

前提と、その範囲を書き出す#

ルールを一文で書きます。入植地が貨物を受け取れるのは、季節ごとの到着のときだけ。次に、このルールがまだ何を決めていないかを書き出します。重力、放射線、通信の速さ、入植地が自前で食料を生産しているかどうかについては、何も言っていません。

そうした細部は、必要になったときに決めましょう。構想用のメモでは、調べた科学と、架空の技術を区別しておきます。実在する物理現象にプロットが左右されるなら、数値の限界を決める前に、その現象を調べてください。この練習には、工学的な仕様や生存のための計算は含まれていません。

ひとつの交換部品を追いかける#

保守の必要な、ありふれた仕組みをひとつ選びます。この例では、食料の保存装置に、入植地では製造できない専用の制御装置が使われているとします。補給品には交換用がひとつ入っていますが、故障した装置は二台です。

故障に誰が気づき、誰が原因を突き止め、誰が予備を保管していて、誰がその使用を許可できるのかを書き出します。それぞれの役割を担うのは、別々の人かもしれません。技術者は答えを知っていても動く権限を持たず、役人は仕組みを理解していなくても決定権を握っている、ということがありえます。

制約に制度を形づくらせる#

予備の部品は、公共の倉庫に回すことも、民間の業者に回すこともできます。どのルールで割り当てるのか、住民はそれを公平だと考えているのかを決めましょう。備蓄の方針はあるのか。異議を申し立てることはできるのか。決定を記録するのは誰か。

住民全員に、この仕組みに対して同じ態度をとらせないでください。以前の物資不足を生き延びた人は、厳しい備蓄を支持するかもしれません。今日の配達に生活がかかっている人は、もっと大きな危険を受け入れるかもしれません。一方を合理的、もう一方を愚かと決めつけるのではなく、それぞれの事情から意見の対立を組み立てましょう。

大惨事の前に、ありふれた場面で試す#

作業員が部品を申請する場面を書いてみましょう。問題に気づいてから修理するまでのあいだに、どんな書類、会話、順番待ち、頼みごとが立ちはだかるでしょうか。こうしたやりとりのほうが、技術を並べた1ページよりも、入植地の姿をはっきりと描き出してくれます。

次に、変化をひとつ加えます。次の船が遅れるのです。そこから逃れるための完璧な代替技術をこしらえるのではなく、既存のルールに従って進めましょう。別の手段がありうるなら、それを使ったときに納得してもらえるよう、その代償と限界を早めに示しておきます。

物資不足をひと季節にわたって追う#

交換部品の例を先へ進めてみます。これはありうる展開のひとつで、正解ではありません。

故障した一台は、ほとんどの世帯の食料をまかなう公共の倉庫にあります。もう一台は、お金を払える人に売る民間業者のものです。役割は次のように分かれます。

役割知っていること握っているもの失うかもしれないもの
技術者どの制御装置ならスクラップで応急修理できそうか、そしてその修理は長持ちしないかもしれないこと承認がなければ何もない修理が失敗したときの評判
補給基地の管理人備蓄に何が残っているかの正確な情報予備の部品そのもの権限なく備蓄を開けた場合の職
評議会の役人割り当てのルールと、誰が求めているか承認の権限どちらの装置を選んでも、信頼
民間業者客が何を必要とし、いくら払うか故障した二台目の装置在庫と収入

役人は、より多くの人の食料をまかなう装置を優先するという明文化されたルールに従い、予備の部品を公共の倉庫に回します。技術者は、有料の副業として業者の制御装置を応急修理します。業者は値上げをし、それを危険手当と呼びます。ここまでは、どの選択も正当化できます。

そこへ船の遅れが重なります。備蓄は空になり、応急修理した装置がいまや入植地で唯一の予備になります。つまり、安全の余裕を握っているのは評議会ではなく業者です。各世帯は、技術者に直接頼みごとをするようになります。新しい価格を払えない家族は役人の決定に異議を申し立て、補給基地の管理人は、もはや誰も守れなくなった備蓄のルールを弁護しなければなりません。

次の船が着くころには、新しい技術がひとつもないまま、入植地は変わっています。備蓄のルールは予備を二つ求めるようになっているかもしれません。技術者は人々が恩を負う存在になり、業者は欠乏にどれほどの価値があるかを学んでいます。

物語がどこまで決めておくべきかを判断する#

必要な細部の量は、物語が読者に何を追わせるかで決まります。次の表は、ルールではなく、編集部が考える出発点です。

物語の軸が早めに決めること未定のままでよいこと
工学とサバイバル故障する仕組みの限界。実在の現象に基づく部分は調べておく入植地の外の政治
政治と割り当て誰が決めるのか、誰が異議を申し立てられるのか、誰が記録を残すのか正確な技術的数値
家族と日常生活制約のまわりに育つ日課、蓄え、頼みごと技術的な細部のほとんど
ミステリー予備の部品と記録に誰が近づけたか手がかりにならないものすべて

長さも関係します。短編なら、ひとつの故障とひとつの決定の中で完結できます。長編なら、遅れも含めてひと季節全体を描く余裕があります。シリーズものでは、何度かの到着を経て、制度が硬直したり緩んだりしていく様子を描けます。視点人物が複数いるなら、役人の章では話の流れを止めてしまうような修理の細部も、技術者の章なら描けます。

変わったことと、まだわからないことを記録する#

補給品の到着、故障、割り当ての決定を年表に書き込みます。関係する倉庫やルートは、作業用の地図でスケッチしましょう。不確かな技術的細部は、すでに原稿で使った事実とは分けておきます。

最初の役に立つ設定資料は、短くて構いません。前提がひとつ、仕組みがひとつ、その責任を負う人々、そしてそれが迫る決断です。文化は、そうした責任のまわりに育つ習慣を通じて広げていきます。貨物の到着日に印を付けた暦、予備のねじを一本残らず取っておく家族、修理をめぐる口論。どれも、同じひとつのルールから生まれえます。

よくある失敗と直し方#

前提の抜け穴。 通信や予備のシャトルで助けを呼べるなら、季節ごとのルールは縛りとして機能しなくなります。到着と到着のあいだに入植地が何を求められて、何を求められないのかを決め、新しい能力を加えるたびに前提と照らし合わせましょう。

誰もが機械をわかっている。 住民全員が制御装置の故障を診断できる入植地には、門番も誤解も存在しません。仕組みを理解していなくても、それに頼って暮らしている利用者を登場させましょう。料理人、教師、倉庫の前に並ぶ世帯の人々などです。

制約をYazar.ioに持ち込む#

Yazar.ioには、この入植地にぴったり当てはまるセクションがあります。補給基地は「場所」、予備の部品は「アイテム」、季節ごとの貨物のルールは「世界設定」、部品を割り当てる人々は「登場人物」です。彼らの項目で貨物のルールに触れておけば、ルールのページのバックリンクパネルに、そのルールに縛られている全員が表示されます(機能紹介)。

技術的な仮定と、物語の中で確定した事実は、「メモ」とそのステータスで分けておきましょう。仮定は、ある場面でそれを確定させるまで「アイデア」か「進行中」のままにしておき、確定したら「使用済み」にします。船が遅れたときには、リンクを見れば、その遅れがどの人物と場所に影響するかがわかるので、新しい場面も同じ前提に沿って書けます。

出典