結論から言うと

年表に何を見つけてほしいかで選びます。短編や、暦がひとつだけの長編なら表計算シートで十分です。Aeon Timelineは年齢、期間、架空の暦が絡むプロットに向いており、それらを計算してくれるうえ、ScrivenerやUlyssesとも同期できます。Yazar.ioは、出来事を関わる登場人物や場所と結び付け、WordやGoogleドキュメントの原稿の横で管理したい小説家に向いていますが、日付の計算はしません。Campfireは、年表、独自の暦、原稿をひとつのアプリにまとめたい書き手に向いています。Obsidianは、ノートのプロパティから年表を自分で組み立てる手間をいとわない書き手向けです。Plottrは、日付のある時系列よりも、物語の順序に沿った構成づくりに向いています。このおすすめリストは公式ドキュメントに基づくもので、実際に使って試したものではありません。

第4章では、包囲戦のさなかに救援の手紙を運んだとき、Neveは「15歳になったばかり」だったと書かれています。ところが設定メモでは、彼女は388年生まれで、包囲戦が始まったのは401年です。どちらかが間違っています。年表ツールに存在価値があるとすれば、それは読者より先に、どちらが間違っているかを示してくれる場合です。

これは点数によるランキングではなく、用途別に整理したおすすめリストです。製品の情報は2026年10月11日に各社の公式ドキュメントで確認したもので、ツールを実際に使って試してはいません。価格は記載していません。

年表に何を見つけてほしいかを決める#

年表の誤りには三つの種類があり、以下のツールはどれに役立つかがそれぞれ違います。

  • 順序: 何が何より先に起きたか。そして、ある場面の時点でキャラクターが何を知りえたか。
  • 計算: 年齢、移動にかかる時間、出来事のあいだの年数。ツールがこれを代わりにやってくれるのは、そのツールが自分の作った暦を理解できる場合だけです。
  • つながり: ある出来事がどの人物や場所に関わるか。これがわかれば、出来事を動かしたときに、ほかに何を動かすべきかが見えてきます。

あわせて、時系列順のほかに物語の順序も必要かどうかを決めておきましょう。第12章で語られる回想も、起きたのは390年です。方法については年表の作り方ガイドで解説しています。この記事で扱うのは、それをどこで管理するかです。

サンプル:Neveの手紙とKessin包囲戦#

候補のツールすべてに、同じ記録を入力します。キャラクターは2人、伝令のNeveと、Kessin砦の記録係Aldousです。場所は二つ、Kessin砦とTamberの浅瀬。出来事は四つです。

書かれた日付出来事関わるもの
388年Neveが生まれるNeve
401年、春Tamberの浅瀬が氾濫するTamberの浅瀬
401年、真夏Kessin砦の包囲戦が始まるAldous、Kessin砦
401年、晩夏Neveが救援の手紙を運んで浅瀬を渡るNeve、Aldous、Tamberの浅瀬

第4章では、最後の出来事の時点でNeveを「15歳になったばかり」としています。実際には13歳です。それぞれのツールがこの問題をどう示すか、計算のうちどれだけを自分でやったかに注目してください。次に包囲戦を1年後ろにずらし、手作業で直さなければならなかった箇所を数えます。

シンプルか、計算させるか:表計算シートかAeon Timeline#

表計算シート#

出来事ごとに1行を使い、並べ替え用の年、書かれたとおりの日付、出来事、人物、場所の列を作ります。年で並べ替え、名前で絞り込み、出来事の年から生年を引く数式を加えます。Neveのサンプルなら、その数式がすぐに誤りを知らせてくれます。ただし、数式を自分で書いていればの話です。限界はおなじみのものです。キャラクターのメモとは何もリンクせず、変更はすべて手作業で、架空の暦で並べ替えるには数値だけの列が必要です。

Aeon Timeline#

Aeon Timelineは、ここで紹介するツールの中でもっとも多くの計算をこなします。世界観設定向けのページでは、独自の紀元、月、曜日を持つカスタム暦と、キャラクターの年齢やプロット上の出来事のあいだの時間の自動追跡が紹介されています。ストーリーテリングのページによると、キャラクターごとに別々のタイムラインを持たせて、誰かが同時に二つの場所にいる事態を防げます。Narrativeビューでは、日付に関係なく場面を好きな順序にドラッグできます(ナラティブとストーリーテリング)。関係性には、その人物が出来事に参加したのか、見ていただけなのかを記録でき、依存関係を設定すれば、どの出来事がほかの出来事の前提になっているかがわかります(割り当てと追跡)。MacとWindowsのScrivener、MacのUlyssesと双方向で同期でき、CSVの読み込みと書き出しにも対応しています(連携)。

作品の保存や共有のしかたに合うかどうかを確認しましょう。タイムラインのファイルはローカルに保存され、タイムラインをウェブで公開することはできません。FAQでは共同作業に共有ドライブを使うよう勧めていますが、同時に編集すると競合が起きるとも警告しています(FAQ)。対応しているのはMac、Windows、iPad、iPhoneで、執筆アプリとの同期と自動バックアップはデスクトップ版のみです(対応プラットフォーム)。14日間の無料体験版があります(Aeon Timeline)。

世界とつなげるなら:Yazar.ioかCampfire#

Yazar.ioの「年表」#

Yazar.ioでは、年表は世界観設定の作業スペースの中にあり、原稿はその横のWordやGoogleドキュメントで書きます。各出来事にはタイトル、自由入力の日付ラベル(「401年、晩夏」もそのまま書けます)、任意のメモがあり、ドラッグで並べ替えられます(年表)。NeveとAldousを参加者に、Tamberの浅瀬を場所に追加すると、それぞれのページに関連する出来事が年表の順に表示されます(アップデート情報)。こうしてNeveのページでは、誕生と手紙の出来事がひとつの一覧にまとまり、プロフィール、人間関係、彼女に言及するすべての項目を示すバックリンクのパネルと並びます(機能紹介)。これはYazar.ioが得意とする作業です。年表は独立した図表ではなく、各キャラクターの記録の一部になります。無料プランでも無制限に使え(プランと制限)、iPhone、iPad、Androidのアプリでも利用できます(モバイルアプリ)。

この用途では、限界も重要です。Yazar.ioは日付や期間を計算しないため、401から388を引くのは自分の仕事です。年表は1本の順序付きリストなので、並行する年表が必要なら、出来事のタイトルに自分でラベルを付けます。閲覧専用のWikiに公開することもできますが、初期状態ではオフです。ネタバレはオフのまま守られ、オンにすると読者がたどれます(アップデート情報)。

CampfireのTimelineモジュールとCalendarモジュール#

Campfireは、年表と原稿を同じアプリで扱いたい書き手に向いています。Timeline(タイムライン)モジュールでは、出来事のカードをカスタマイズ可能な行と区切りに配置し、フローチャートのようにつなげ、長い期間はガントチャート表示に切り替え、時代ごとに色分けできます。1行を1人のキャラクターの動きに充てることができ、出来事はArcsモジュールとリンクでき、10種類以上のプロットテンプレートも用意されています。Calendar(カレンダー)モジュールでは、暦の月や週、空に浮かぶ月、紀元を自由に作れ、タイムラインと双方向にリンクします(カレンダー)。

確認したページには年齢の自動計算についての記述がないため、それを当てにする前にNeveのサンプルで試してください。無料プランではタイムラインの出来事は20件、暦はひとつまでです(料金)。iOSとAndroidのアプリで扱えるのは、タイムラインの出来事だけです(アプリ)。

自分で組むか、場面順で整理するか:ObsidianかPlottr#

Obsidian#

Obsidianのヘルプにタイムライン表示の説明はありませんが、それを組み立てる部品は記載されています。ノートはローカルフォルダー内のMarkdownファイルです(データの保存方法)。プロパティを使うと、数値、日付、リストといった型付きの項目をノートに追加できます(プロパティ)。コアプラグインのBasesは、ノートを表、リスト、カード、かんばんボード、地図として表示し、それらのプロパティや数式で並べ替え、絞り込み、グループ化できます(Bases、ビュー)。出来事のノートごとに数値のyearとリストのpeopleを設定すれば、年で並べ替えたBasesの表がそのまま年表になります。図で見たいなら、コアプラグインのCanvas(キャンバス)で、何もない平面にカードを手で配置し、線でつなげられます(Canvas)。

難点は暦です。日付プロパティには2020-08-21のような現実の暦の日付が入るため、架空の暦には、並べ替え用の数値プロパティと、書かれたとおりの日付を入れるテキストプロパティが必要です。年齢や年数の差は、手で計算するか、自分で設定した数式で求めることになります。

Plottr#

Plottrはプロットを組み立てるためのツールです。ドラッグ&ドロップのタイムラインに、メインプロット、サブプロット、キャラクターアークといったプロットラインを、章、場面、ビートに沿って並べます。場面カードではキャラクター、場所、タグを管理でき、タイムラインの向きを入れ替えたり、縮小表示したり、絞り込んだりして、誰がいつどこで何をしているかを確認できます。シリーズ全体のタイムラインと本ごとのタイムラインを持たせることができ、アウトラインはWordとScrivenerに書き出せます。WindowsとMacで動作し、Pro版ではウェブアプリ、クラウドストレージ、共同作業者が加わります(Plottr)。30日間の無料体験版があります(無料体験版)。

機能紹介のページで説明されているのは章とビートで、暦の日付や年齢の計算ではないため、物語の順序を扱うツールと考えてください。第4章の手紙の場面を包囲戦のサブプロットと並べて見せてはくれますが、Neveの年齢はキャラクター紹介の一項目にとどまり、確かめるのは自分です。

用途で比べる#

ランキングではなく、必要な作業ごとに整理した年表ツール
必要なことまず検討するツール確認すること
短編、または暦がひとつの長編表計算シート並べ替えのキーと年齢の数式は自分で管理
年齢、期間、架空の暦を計算してほしいAeon Timelineローカルファイル、ウェブ公開なし、共同編集は共有ドライブ経由
時系列と並べて物語の順序も管理し、ScrivenerやUlyssesと同期したいAeon Timeline同期はデスクトップ版のみ
WordやGoogleドキュメントの原稿の横で、出来事を登場人物や場所と結び付けたいYazar.io日付の計算と並行する年表はない
年表、独自の暦、原稿をひとつのアプリでCampfire無料プランは出来事20件まで。モバイルでは出来事のみ表示
自分のメモと項目から組み立てる年表Obsidianプロパティ、ビュー、計算はすべて自分で設計
章や巻をまたぐサブプロットPlottr日付のある時系列ではなく物語の順序

年表ツールでよくある失敗#

  • 並べ替えた一覧をチェック代わりにする。 並べ替えでわかるのは順序だけで、Neveが13歳だとは教えてくれません。計算をしてくれるのは、計算機能のあるツールか、自分で書いた数式だけです。
  • 物語の順序と時系列を混同する。 何かが語られる章と、それが実際に起きた時点は分けて管理しましょう。
  • 架空の暦に現実の日付を使う。 2026-10-11のような入力を想定した日付欄は、「401年、晩夏」とはうまく噛み合いません。並べ替えには数値、表示にはテキストを使いましょう。
  • 物語が必要とする前に歴史を作り込む。 まずは章が依存している出来事から始め、何世紀も前の歴史は、それ以前の原因が重要になったときに加えます。
  • ひとつのアプリにしかコピーを置かない。 ほかの場所でも開ける形式で書き出し、一度は実際に開いて確かめましょう。

どんな人にどれが向いているか#

  • 短編、または暦がひとつの最初の長編: 表計算シートから始め、その管理自体が作業になってきたら移行しましょう。
  • 年齢、移動時間、長い架空の歴史が鍵になるプロット: Aeon Timelineはまさにその計算のために作られています。準備に手間がかかることは覚悟しておきましょう。
  • WordやGoogleドキュメントで書いていて、登場人物が増えていく小説家: Yazar.ioなら、各キャラクターの出来事をそれぞれのページで、世界のほかの設定と一緒に管理できます。計算は自分で行います。
  • 原稿、暦、年表をひとつのアプリにまとめたい書き手: Campfire。無料プランの範囲内で、または有料プランで。
  • Obsidianのユーザー: 別のアプリを足す前に、プロパティとBasesで年表を組み立ててみましょう。
  • シリーズをまたいでサブプロットを管理するプロット重視の書き手: 物語の順序にはPlottrを使い、時系列が重要なら日付を扱える別のツールと組み合わせます。

世界観設定ツール全般については世界観設定ツールのおすすめをご覧ください。誕生や王位継承の時期がずれてしまうなら、ファンタジー王家の家系図の作り方を試してみてください。

出典